書籍紹介
習慣は「きっかけ」「欲求」「反応」「報酬」という4つのステップから成ることから、これら4つの行動変化を行う方法を説明した実践マニュアル本となっています。具体的には習慣をつけたい行動に対して「はっきりさせる」「魅力的にする」「やさしくする」「満足できるようにする」ようにし、習慣を絶ちたい行動に対して「見えないようにする」「つまらなくする」「難しくする」「満足できないようにする」ようにすることによって、望ましい行動変化を促す方法を具体的に説明しています。
これらの行動変化を促すマニュアルを作成するに当たっては、「生物学」「神経科学」「哲学」「心理学」などを参考に認知科学と行動科学について著者なりに統合、整理しているのが大きな特徴となっています。人間の行動は時代や状況によって変化するものの、その行動の基本は変わらないものがあり、それを生かして各人の目的達成に必要となる習慣の変化を4つのステップにおいて行う自己改善の方法を説明しています。
習慣は自己改善を複利で積み上げたものであり、毎日のわずかな改善が長期的には大きな改善になることをこの本では強調しています。自己改善が複利の利子を生んでいくようなものであり、短期間ではほとんど違いが見えないが2年、5年、10年と長期にわたると、良い習慣によって得られる利益がはっきりと見えてくることを本書で指し示しています。
読んでみての感想
本サイトの別記事として紹介している「複利効果の生活習慣」と合わせて読むことをお勧めします。「複利効果の生活習慣」では、良い選択+努力+習慣化について、自分自身の活動への規律や高いモチベーションを求めているのに対して、本書は、自己抑制だけに頼るのではなく、認知科学や行動科学の考えを利用して、合理的に習慣の改善を図る方法を実践に活用できるように説明しており、同じ習慣の改善を勧めながらも、その改善の手法がかなり異なることが非常に面白いと感じました。
「複利効果の生活習慣」で習慣の改善によるも目標達成のモチベーションを高めながら、併せて本書を読んで、合理的な習慣改善の方法を構築するという感じで、両書を繰り返し併読して、良いとこ取りをするのも良いかもしれません。
合理的な習慣改善の方法については、著者のジムクレアー自身が習慣改善についての最新の考えを発表しているWebサイトを提供しており、その中で習慣改善に必要なワークシートなどを提供しており、それらを活用しながら綿密に習慣改善の方策を立てていくこともできます。
Audibleの英文ナレーション
非常に落ち着いた英文ナレーションとなっています。改めて「複利効果の生活習慣」との併読を薦めますが、「複利効果の生活習慣」の英文ナレーションがシャウトするようで、モチベーションの維持・向上を促すようなナレーションであるのに対して、本書のナレーションでは、合理的に習慣改善の方法を説明するような落ち着いたトーンのナレーションとなっており、それぞれの違いも楽しめます。
ちなみにAmazon Audibleで購入した本書の邦訳書ナレーションも非常に落ち着いたトーンになっており、日本語のナレーションを聞いて本書内容の理解を進めてから英文ナレーションに移行するという学習の進め方でも良いかもしれません。
英語学習で要約読解する場合のポイント
第1章「最小習慣の驚くべき力」第2章「習慣がアイデンティティを形成する」は習慣改善の基本的な考えが書かれており非常に重要です。第3章「シンプルな四つのステップで良い習慣を身に着ける」以降は習慣の4つのステップに照らし合わせた具体的な習慣改善方法が記載されています。それぞれの改善方法の背景となる科学実験・事実検証の事例での説明が多少長く、英語学習の材料としては集中力が切れてしまう懸念があるため、各章の「本章のまとめ」や「習慣早見表」など要点記載の部分のみをピックアップして英語学習を進めるのも良いかもしれないです。
複利で伸びる1つの習慣(邦訳書) 複利で伸びる1つの習慣(洋書)